「また頑張ろう」

2013年3月。40を前にして何か良い趣味はないかと探していた夫の目に、米長邦雄前将棋連盟会長の追悼記事が止まった。「将棋かぁ…」それが全ての始まりだった。

娘も興味を示し、図書館から将棋の本を借りてきた。慎重な娘は、無邪気に夫に「指そう!」なんて言ったりしない。初心者向けの入門書を読み込み、勝つめどが立つまでは一切指そうとしなかった。それでも夫は、自分がやろうとしていることに娘も同じように興味を持ち、まんざらでもなさそうだった。

さて、娘は一人っ子である。夫と娘が将棋を始めたのに、私が将棋を知らなかったら、置いてきぼりにされてしまう。私は、慌てて二人の後を追いかけた。

第26回社団戦 ねこまどチームHPより)

ねこまどチームの一員として社団戦に参加して、早5年。この間に、中学生棋士藤井聡太四段の誕生とその後の活躍によって空前の将棋ブームが巻き起こり、社団戦にも新たに「7部」が増設された。はじめの年に、右も左も分からないまま5部に放り込まれてヒィヒィ泣いていた私達も、すっかり7部に落ち着いた。

将棋を始めてどのくらい経った頃だろうか。谷川浩司九段の「何事も10年かけて一人前」という主旨の言葉に感銘を受け、「10年かけて初段になる!」と宣言した。

しかし、その後遅々として上達の見えない母に、娘は言った。「それっていつから“10年”を数え始めるの?」 ……沈黙……

そんな亀の歩みの私だが、今期の社団戦で成長を感じられる出来事があった。それは社団戦3日目のこと —–

初日の初戦で運良く勝つことが出来て「わーい、わーい」と喜んだのも束の間、その後怒濤の6連敗。。。「もうこのまま一生社団戦で勝てないんじゃないか」という暗く沈んだ気持ちで迎えた、対「六郷の青空1」戦。

私なりに頑張って攻めて、ようやく手に入れた今期2勝目!!

あまりに嬉しくて、それと同時に、抜け番のメンバーが棋譜を取っていなかったことがあまりにもったいなくて、「よし、自分で棋譜を起こそう!」と思い立った。

以前、棋譜起こしに挑戦した時には、早い段階で辻褄を合わせるためだけに“創作実戦譜”を書いているような状態になり、そのうちそれもうまくいかなくなって、結局途中であきらめた。

が!今回は、序盤の駒組み、中盤のやり取り、終盤の応酬、と順調に再現し、投了図までたどり着くことが出来た!

「遂に棋譜を起こせるところまで成長したか~」と、我ながら感動した。

しかし、ここで疑問が一つ。

「相手は持ち駒が歩だけになって『もう攻める手なし』と見て投了したんじゃなかったっけ?何で金がまだ持ち駒に残ってるんだろう??」

……というわけで、完全に再現出来たわけではなかったが、前回は途中であきらめたことを思えば大きな進歩だ。

負けて凹むことの方が圧倒的に多いけれど、時々巡り会う“上達を感じられる出来事”が、次の「また頑張ろう」につながる。

10年を超えてゴールに辿り着いていなくても、きっと亀は歩き続けているだろう。

今期、ねこまど・ねこまどタマと対戦し、感想戦を通して私達に将棋を教えてくださった皆様、運営に尽力してくださった皆様、どうもありがとうございました。

来期もどうぞよろしくお願いします。

 

内山 優子

 

 

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